IFR’s Women in Robotics

国際ロボット連盟(IFR)は、ロボティクス分野で活躍する女性の知名度を高め、その功績を称える活動を推進しており、毎年約10人の女性が選ばれています。「Women in Robotics 2026」では、川崎重工業株式会社の笹尾朝美氏が選ばれ、その詳細なプロフィールが紹介されています。
「Women in Robotics 2026」については、以下をご参照ください。
https://ifr.org/ifr-press-releases/news/ifrs-women-in-robotics-2026
https://jara.jp/various/ifr/pressrelease/pr20260701-1/index.html(日本語参考訳)

Women in Robotics - 2026年3月12日
笹尾朝美氏の人物像
2026年の「ロボティクスの未来を形作る11人の女性たち」

日本全国の製造現場に産業用ロボットが急速に導入され始めた1991年に、私は川崎重工業株式会社に入社し、ロボットディビジョンに配属されました。

学生時代の専攻は無線工学でしたが、私の最初の業務には、産業用ロボット向け制御システムのソフトウェア開発も含まれていました。入社後に初めてプログラミング言語を学び、試行錯誤を繰り返しつつ、動作計画に沿って次第にロボットが動くようになる様子を見ながら、技術者として充実した経験を少しずつ積んでいきました。

産業用ロボットは、お客様の製造設備において欠かせない装置です。ダウンタイムは製造工程に甚大な影響を与える可能性があり、その分、大きな責任感を伴います。それでもなお、現場で数多くのロボットが、自分が開発したソフトウェアによって一斉に動いている様子を目の当たりにすると、とてもやりがいを感じました。こうした経験を通して、ロボットにとってソフトウェアが非常に重要であることに気づき、この分野における研究開発に専念するようになりました。

その後、結婚と出産を経て、育児休業(育休)を取得しました。復職して間もなく第2子を出産し、再び育休を取得しましたが、結果的に自分のキャリアが度々中断することとなってしまいました。

当時の日本は、男女雇用機会均等法が施行されていたとはいえ、職場のシステムや男女平等に対する組織の意識はまだ十分とは言えませんでした。育児をしながら働き続ける女性は少なく、女性は結婚や出産を機に退職するものだと一般的には思われていた時代です。私もこうした周囲の視線に直面しました。

同時に、私自身入社して数年が経ち、直接お客様と仕様の調整を行ったり、単独でソフトウェア開発プロジェクトを進めるなど、より積極的な役割を担い始めていました。この仕事で得られる満足感や、これまで積み重ねてきた専門知識を手放したくなかったため、ロボティクス分野で働き続けることを選びました。

復職してしばらくすると、仕事上の責任と育児を両立することは非常に難しいことが分かりました。子どもたちが小さいうちは出張はできませんし、子どもたちが体調を崩し、保育所に預けられない場合は、数日出勤できないこともありました。私はたびたび自信をなくしながら、自問自答していました。周りの人たちに負担をかけ過ぎているのではないか、仕事を辞める方がいいのではないか、と。

こうした困難はありましたが、上司や同僚、家族の理解や支えのおかげで、私はこの分野で仕事を続けることができました。私の不在時には同僚が現場での責任を負ってくれたことも何度もあり、彼らの協力は、私が職務を継続する上で大きな助けとなりました。当時の上司からのある言葉が、私にとってとても大切で、心に残っています。「育児と仕事の両立は、個人の問題ではなく、社会全体で取り組み、支えるべき課題だ。」

カワサキロボットと笹尾朝美氏(©川崎重工業株式会社)

カワサキロボットと笹尾朝美氏(©川崎重工業株式会社)

キャリアを継続する中で、幅広い経験と技術的な専門知識を積み重ねてきました。お客様と協力しながら数多くの開発プロジェクトに関わり、品質及び生産性の向上を目指してきました。この中には、スポット溶接ロボットの溶接性能及びサイクルタイムの強化や、溶接データの収集・利用システムの開発も含まれます。こうした経験は、技術者として貴重な財産となっています。

今の私は、かつて先輩方から学んだ知識やスキルを次の世代へと受け継ぐ立場となり、指導や助言を行っています。かつての自分のように、将来への不安や困難に直面しながら働き続けている人たちを支えたいと思っています。そうすることで、彼らがロボティクス分野で長期的に継続したキャリアを築いていけると思うのです。

ロボティクス分野での将来を検討している方々へ、たとえ不安や困難に直面しても、自分が誠実に取り組み、その価値があると考える業務に携わる日々を大切にしてください。周りの人たちの支えによって止まらずに進み続けることで、チャンスは広がり続けるでしょう。

多様な背景を持つ人々が、それぞれ自身の方法で貢献できるようになれば、ロボティクス分野の未来は豊かなものになり、業界全体が強くなると私は確信しています。

国際ロボット連盟(IFR)が配信するブログ(英文)の日本語参考訳を掲載しています。なお、原文と日本語参考訳との間に齟齬がある場合は、原文の内容が優先されます。
※ 原文はこちらからご覧いただけます。